映画日記

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ハルちゃん 後編

待ち合わせ場所は、原宿でした。
クリスマスの時期で、通りには沢山のイルミネーションが飾られていたのを覚えています。

待ち合わせ場所に、ハルちゃんはやってきました。 メイク、髪型、きゃしゃな体つきはあの頃と全く一緒でしたが、マダムの着るような真っ黒の毛皮のコートとミニスカート、高いヒールのパンプスが、何だか私達より先に大人になったんだなぁ、という印象を与えられたのを覚えています。

「みんな、久しぶりだね。」
あの頃と変わらないクールな表情で、ハルちゃんは言いました。

その後、写真を撮ったり、色々と話をしたのと思うのですが、突然ハルちゃんが、
「ね、この女ばっかりで、このクリスマス一色の表参道を手つないで歩こうよ。」
と言い出し、みんなで手をつないで道いっぱいに広がり、キャーキャー言いながら歩いたのを覚えています。





あれ以来、彼女には会っていません。
10代半ばで学校をやめ、その後、自分の事を誰も知らない東京に来て、生きていくのを決心した彼女。
「みんな、久しぶり。」と言った、いつもと変わらない会話の中にも、どこか寂しそうな表情を見せた彼女。
きっと、これからも会う可能性はないかもしれませんが何故か、夜、冷たい風を頬に感じながら表参道を歩くたびに、あの時の彼女の表情を思い出します。
この風が暖かくなる頃には、そんな事は思い出さなくなるのでしょうか。
そんな事を自問自答しながら、今日も街中を歩きます。


                    終わり